【エッセイ】そうめんに全くテンションが上がらない
率直に申し上げて、そうめんってどうなんだろう。この子、どうもテンションが上がらない。まるで夏の主役みたいな顔をしているが、ちょっと叱りつけておかないといけないかなという気もする。
第一、そうめんのCMがおかしい。なぜか浴衣姿で、縁側で風鈴なんか鳴らしながら男女が食べているという構図が多いが。夏場にこれだけ気温の高い国の、どこに行けばあんな風景が残っているのだろうと疑問に思う。35度以上が普通になってきた令和2年であんなことやったら、確実に熱中症になるぞ。
暑い夏に冷たい食べ物をという発想もおかしい気がする。クーラーが必須の現代なら、昼間の部屋の温度は27〜28度に設定されている。そこで冷たいものを食べると、逆にお腹を冷やしてしまうので逆効果じゃないのか。むしろ温かい食べ物の方が胃腸には優しい気がする。
それと、そうめんってイマイチ食べた気がしない。昼ごはんとしてはどうも頼りない。同じ麺類でも、ラーメンやパスタのようなどっしり感は無いし、ざるそばのような風情も感じない。うどんのようなこしも無い。何だか流動食のような気さえする。
漢字にしても頼りない。素麺ってか。「素の麺」ですよ、奥さん。こんな没個性の子、面倒見切れないし、やる気をまるで感じない。
そもそも、そうめんが大好きって人、聞いたことがない。今日のお昼はそうめんよぉ〜と母親に言われて、ガッツポーズで飛び上がってる子供、見たことない。今日は暑いからそうめん「でも」作っておくかという感じの方が強い。そうだ。そうめんという食べ物は「でも」レベルなのだ。
父の仕事の関係で、昔からお中元やお歳暮がたくさん届く家庭に育った。夏場には必ずそうめんが含まれている。送ってくる人もほぼ同じ。我が家では「そうめんの人」と認識されている。今は実家を離れているが、この時期に送られてくる荷物にはそうめんが入っている。
そうだ。まさしく今このタイミングで、大して好きでもないそうめんが家にある。というより家にいる。さてどうしたもんか。そう思いながら、かれこれ二週間は経つ。やはりどうしてもテンションは上がらない。そのうち食べるとは思うが、せいぜい「でも」レベルには違いない。貴重な一食をそれで終わらせて良いものか。そんなことを考え始めると、また更に時間だけが過ぎる。夏だなって気がする。
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